曇り空の下の踏み切りに引っ掛かる
傘がきっと足りなくて新しいスーパーも
せっかく少し前見つけているのに
君といつもの百貨店でだけ買い物を済ませて
帰り道黙りながら僕は君より
一歩前電車が通り過ぎるのを待っている
四月を前に咲いてしまう花の花びらが
抜け道を抜ける僕のまだ頭上から降って来る
白いビニル袋を片手に歩く君にも降っているんだろう
白いビニル袋を両手に振り返る僕は君のまだ足下に
枝先ごと落ちているまだ咲く花と蕾の房を拾い上げる
僕の持つ君の部屋の鍵でドアを開けると銀色の薬缶で
大きなプリンの空き瓶に注いだ残りの水を火に掛ける
インスタントコーヒーとミルクと砂糖の粉末を君が
座りながら二人のカップにスプーンで入れている風景を
花が綺麗だねと声を掛けながら僕は眺めている電気コンロで
大きな音を立てて水が沸騰してしまうまではきっと
枯れるまでは居ようかと思っていた君の部屋を
出てみると久し振りに見る青さが空に広がっている
忘れてしまっている事と憶えている事とどちらの方が
僕を傷つけるんだろう君を他人を傷つけるんだろう
やがて雲がまた覆う日の光を
横切るようにプラットホームを歩きながら僕は思う前に
携帯電話の短いメールで
君を呼んでいた君の仕事の帰り道と落ち合うようにして
行き損なったお城の大きな公園のたくさんらしい花を並んで
見に行くのを叶えよう
ライトアップされている真っ白いお城と高い月を背景に眠る
ような花を見上げながら堀の周りを延々と歩いた夜
夜なのに雲ひとつなく晴れている空を少しだけ不思議に思って
僕は出たばかりの星を見つけて星が出ているって君に言った
君が花が落ちているって僕に言ったように