すれ違いを減らしても
僕等、出会いの数は変わらない。
僕は花を抱えて歩く。君の花を抱えて歩く。
長く、
花を抱えるまでの日々があり、今は
ただ歩く。
僕には、知らないことが“いつまでも”あるんだ。
浅い傷が治るまでを、時々確認しながら過ごす毎日に、
とても大きな傷を持った人が通りかかり、僕は驚く。
手を横に振ると雨が降り、やがて、僕の目は見えなくなった。
何も、見えなくなった。
僕は、
色を憶え忘れた花びらを撫でた。
数え忘れた君の月日の匂いを嗅いだ。
“いつまでも”
思い出せないわけを、
考えつづけて
泣いていた。
やがて、君はいなくなった。
気がつけば、温かかった涙は
冷たい雨になっていた。
僕の目には見えなかった、、、
君が手を横に振るのを。
そして、朝と夜を僕は知った。
月は香り、
日は聴こえる。と、
風に乗り、鳥は鳴っている。
ここで、待つ間、
ささやかな話をうそぶこう。
僕は君を、とても
とても、好きだった。
もうなに一つ思い出すことはない。
揺さぶると木漏れ日の手が頬に触れたあの木の下で、
もう一度
僕は手を横に振る。
あの日の花を、
僕は今日、目を瞑っても見つけられるよ。
あの日、君の笑い声が
こころのなかで少しずつ近づいていた。
空への坂道で君はもしかしたら笑いかけてくれたのか、
今はそう 思っているんだ。
僕は花を抱えて歩く。君の花を抱えて歩く。
長く、
花を抱えるまでの日々があり、今は
ただ歩く。
雨のなかを、見違えないで
道間違えて。
終わりには、笑い声だけが、僕の景色になってしまった。
笑い顔だけが、浮かびあがった。
浮かびあがって、