太陽の雫が夜空の球体へ落ち続けてる今夜を
薄曇が切り取ってできた満月を囲んだ虹の輪っかと
別れの思い出のときたま揺れるのを僕に見せて
波の高さと広がりの速さを伝えてくれる
球体の向こうを走り続ける赤い首輪の白い捨て犬
星はその犬の後ろ足に跳ねた小さめの水たまりの雫だろうか
虹の輪っかに瞬きばかりを繰り返してる
あんまり今日は特別素敵な空みたいだな
空をもう見ないで帰ろう
いっそ地面を見ながら帰ろう
僕は今日は君と会えたから
たくさん話せたからそれだけでよくってね
外灯はジグザグに曲がりくねった道に沿い
光のマントに足の入るたび
迎え入れられた気のするひとりぽっちが
また君に会いたいなんて当たり前に寂しがる
それなのになんてことだろう
アスファルトの道がさっき見た夜空より
ところどころで星より細かく光ってる
満月のせいだろう
外灯のせいだろう
君のせいではないだろう
瞳を見つめ過ぎて涙が滲んだけれど
寒かったけどとどまりたいと言ってみたけど
何が光ってるんだろう
あの砂場の砂に混ざってた石のかけらだろう
こころにあるものなどではないだろう
出来過ぎなほど素敵に今日は晴れたけど
目を背けてた地面なんかが空にも勝って輝くけれど
この足元から広がっていく星屑の道
現実があまりにもきれいなものだけでできているのは
あの時もあの時も悲しい結末の始まりだったけど
あの頃もあの頃もこの一瞬だけでいいと思ってたっけ
大きく一度恐いけど小さく何度か強くなってる
空に見えないのならいっそアスファルト星雲を行こうか
星のあまりに多くあるあまりに長く歩いて来たこの道を
君のせいではないだろうけど
こころにあるものなどではないだろうけど
アスファルト星雲は確かにあって
僕は確かにそれを見たから
赤い首輪には鈴がついていて夜には遠くからも響く
なにかを探していつもの道を行く白い捨て犬
帰り道を知らなかった僕の切なさの集まってできた幻
さぁその虹の輪っかを抜けてこの胸へおいで
毛むくじゃらのおまえを抱きしめて
またあの人には会いに行こう
アスファルト星雲を辿ればきっと
またあの人へと辿り着くだろう
アスファルト星雲がなければそっと
またあの人へとおまえを放つだろう
今度は僕がおまえを連れて
あの夜空だってこのただの道のように