ふと眠りから覚めると
雨が屋根に窓に
真夜中だろうか壁に砕けて
朝方だろうか匂いになってる
寝返りを打ちながら
なんともなく耳を澄ます
雨音は地面と空気を伝い
やがて鼓膜とこころを揺らし始める
空から降りて来て
出会うように砕け散る雨に
なりたかった頃があった
幾千の雨になり
幾千のこころを持ち
幾千のものに出会おうと
雨音を足音みたいに聴いては
眠れず朝焼けばかり待っていた頃
ぐっごっと奥歯が音を立てる
あの頃の痛みはもうたくさんと
確かにこころがそう訴えた
目の中で川面が揺れる
枕に向けて涙が流れる
大切なことを忘れることは
決して間違いじゃない
だけど
そのせいでできなかったことや
その間に過ぎた透明な時間は
やがて後悔に変わり
こうしてこんな真っ暗闇で
ひどく僕を泣かしたりする
カーテンを開き窓を開ける
外灯に照らされて
通りすがりに雨が光り陰る
空はまだ真夜中色で
雲が白く見える
目が慣れて見慣れた部屋が
ぼんやりと見える
濡れた部分を避けて
枕に顔を埋める
明日の朝には…
そんなことを思って僕は眠ろう
冷たい水たまりに頬を当ててみる
氷を打ち砕く杭のように
雨音はまだこころに触れていた