「空と花」第六回展示会

空の涙

僕が涙をこぼしたら

みんな慌てて傘を差す

 

傘を忘れた学生は

あきらめ顔で走り出す

 

少女は部屋から外見つめ

虚ろに窓の水滴を追う

 

てるてる坊主は風に揺れ

冷たい視線を浴びている

 

あの子のママは洗濯物を

干したばかりで取り入れる

 

足を引きずるじいちゃんは

膝が痛いとうずくまる

 

だから僕は

何があっても泣かないんだ

涙がこぼれそうになったなら

灰色の雲で拭うんだ

灰色の雲で隠すんだ

 

それでもこぼれてしまったら

水やりを忘れられたあの花の

鉢の中に落ちるといいな

 

 

 

花の祈り

まだ

誰の目にも触れていない

小さな花のひとつが

真夜中

その見えない涙に気づいて

空を見上げた

 

僕の孤独

その寂しさに

星の光はとてもまぶしい

この花びらの一組が

そう

か弱くても羽ならば

残りは全て

命にかえても

涙を拭うのにと思うのに

少し先の

変わらないこの場所で

この花びらは全て

そっとした風にだって吹き飛んでしまう

 

夕焼けが

あと何度見られる

君の涙にさえ

もうどのくらい

触れていられる

 

僕は汲み上げる

ただのかなしみに見える

ひとしずくから

澄みわたる空のぬくもり

君本来の

君にしかない

その明るさを

 

見えて来た

幾千回の夜明けのように

本当は

昔からずっとそこにいた

真新しい星たちの

ささやきのような

その小さな光の瞬きが

 

こんな小さな

この僕の

もっと小さな

この胸の

この見えないような

この一粒の

この種ひとつで

 

君がかわる

涙は涙のままで

笑顔はそこにあることも

僕は分かる

 

途切れ途切れに続く

僕らをこぼさずに抱いて

その瞬きを忘れずにいて

君よ

涙を拭った指先を

僕の見られないこの先へ

すっと伸ばして