幸福のまんなかにいながら

気づくことのできない人がいれば

不幸のただなかにいて

幸福のかけらを見つける人がいる

 

ぼくはどちらの人になりたいか

と少しだけ考えてみる

人はそうゆうものだ

とは言っても

ぼくはどうありたいかと思い浮かべる

 

空中に月が灯り出す

そのもとで

ひとつきりの明かりも無数に

そこにある

どちらもここから見ればささやかすぎて

音も立てずに

 

そして耳元できみの声がする

笑う顔は向く

前を

ぼくと今

同じ海の

果ての

先を

心なしか

爪先立って

 

見とれてしまう

光とゆうものに

そのうち

名前も何もなくなってしまう

光とゆうものなのに

 

ぼくときみと

今夜笑いながら

闇に

爪先立っている

と思うと何だか

滑稽でもあるけど

それが

ぼくの思い浮かべた

幸福

希望

淋しさが証のように

それは

実際に今夜の出来事だった

まるで夢のようでも

ここにあり

 

風が吹いた後の雨も止んで

月の戸を閉じると

ぼくは眠りに落ちた

眠りに落ちたきみの隣で