さようならリバー

風邪をひいている間に流星群も過ぎて

夕方になって久し振りに外を歩いてみる

僕はまた携帯電話を手放せなくなった

熱に浮かされながらも君のコールにコールを返す

大丈夫、といつも言っていたいわけじゃないけれど

 

浅い眠りの中でいろんな人と再会する

夢だと分かっても気持ちはきっとホンモノだろう

けれど誰だったのか思い出せなくて笑ってしまいそう

薬の紙の箱を覗き込みながら耳を澄ませている

熱の引いてしまった今横になると咳ばかりが止まらなくて

僕は僕に必要なものが少しの間、分からない

 

クリーニングの袋から出して着て来た上着のポケットで

両手を握り締めて歩き続ける

紺色のタートルネックだけではまだ少し寒かったかなあ

点滅する信号機に走り掛ける

煮詰めたみたいな夕日が線路の向こうの低い屋根に沈む

風がなくて僕は君ばかり思う

 

いつも行くレンタルショップをまだ少し行けばある川の匂い

僕の鼻のわるいせいなのか、まだ案外綺麗なのか

嗅いだことがないけれど「すればいいのに」と今日思ったんだ

 

店を出るとあっという間に日が暮れている

寒くなると散歩の途中に立ち寄るのが億劫になるいつもの川原

常々捨てに来る類の感情もしばらくは抱え込んで

少し思い出も多い気がする、また冬が来る

 

「いつまでも」くらい刹那的な言葉もないと、ある夜思うけれど

僕が連れて行けるのは一つくらいだ

小さい、君くらいだ

 

ある朝ボートを漕ぎ出す時も

信じ難く溺れる時も

いつまでも