赤い花

洗濯物の並ぶベランダで

やっと蕾をつけた

鉢植を二人で覗き込む朝

 

夜、疲れて帰り

君の作った食事を食べて

テレビを消したら

自分の部屋で聴く

台所の水の音

 

僕らはまるで

今咲いている花のつもりで

同じ枝先

 

笑顔も涙も惜しげなく

けれど

同じに見えても

去年まだ

君の一人の部屋で咲いていた

花はもう咲かないように

 

きっと何かからの借り物の

同じ枝先で

ひとつの季節

瞬間の赤い花

 

廊下から

君が開け放ったままのカーテンの向こう

小さな夜景が見える

 

静かに刻まれる時間が

いつからか

優しい風のような今

 

夏生れの僕らはまるで

これから咲いてゆく花のつもりで

同じ枝先

 

ひとつの季節

瞬間の赤い花

 

たぶん一輪の