ねむの木

ねむの木が

夜明けから

小さな声で

口笛を吹いている

 

湧きだす

風のはじまり

ほのかな出会い

蝶を包む

花のかおり

 

昨日のことを忘れられずに

泣きはらした目

明日のことは忘れたふりして

今夜は閉じていたい

 

ねむの木が

きゅうくつそうに

爪を切っている

 

はじけ飛ぶ

未来の部品

 

今が過去になる速さで

未来はやって来てくれず

 

すきまの国で

今度は

くしゃみをしている

ねむの木

 

さっきは

あくびしていたのに

 

ねむの木が

むこうから

大きな目で

こちらを見ている

 

ぞっとしながら

ほっとする

 

どこかの風車が

ぎっぎとくるり

こどもの手にした

風船がぱん!