野球場

七月になったばかりの月曜日

野球場の写真のポストカードが届いた

京都のまだ六月の蒸し暑さの中

野球場のある近所の公園のベンチで書いた手紙への

とりあえずの返事らしい

 

漢字は違うけれど同姓同名の店員さんと

なんだか盛り上がって握手を交わしてきました。

 

雑貨屋での光景が思い浮かんで

吹き出しそうになった

一度、神戸の中華街で会ったことのある

彼女はいつもすぐ手紙の返事をくれる人で

淡々と明るいものを胸に灯す

 

何ヶ月か振りに手紙を書いても

一日も早く返事を欲しいと思っている我儘を

人にぶつける勇気はなかなか出せなくて

僕はとても恋愛下手だけれど

過去を引き合いに出して

どれだけ勇気を出したって届かない恋もあるとか

僕の恋は叶わないとか

思って泣いてしまうこともあるけれど

こうして今日も笑いそうになった

人にありがとうって気持ちを持てた

それは嬉しいことだから

 

野球場のある公園の木陰のベンチで手紙を書いたとき

バックネット越しに見下ろす感じになっている

野球場では近所の高校の野球部がキャッチボールをしていた

きっと土の汚れや草の緑が付いて傷だらけだろう

ぱらぱらとやり取りされる球は僕には真白に見える

 

記憶の中の午後四時半の夕景に思った

こういうことが世界中で行われているんだなんて

大げさに

 

信じるということが見えない心の仕業なら

僕はこれからもやっぱり見えない思いみたいなものを

投げ続けるだろう そして

見えないボールが投げ返されるのを待つだろう

当てのなさに挫けそうになっても

 

さようなら、心が楽になろうとして何度も呟いている

君を僕はどれほど好きなのか

会えないときにも会いたいけれど

僕にも分からない

 

君が世界のどこかにいて

僕もその世界に生きていることで

これからも名前を呼び合ったりできるのなら

 

僕は生きていたいと思うし

君に生きていて欲しいと望むのです

 

一枚の野球場のポストカードを手にして

そんなことを思った今日は

七月になったばかりの月曜日

二十五年前のこの月

僕は生まれた