カムフラージ

六月の丁度真中の土曜日は朝から晴れる

陽射しがもう篭もる車内にエアコンを掛けて

まだなのかもうなのか免許証交付日から丁度半年程

僕は走り出して駅前の細い道端で君を拾う

 

ラジオの声が掠れたり切れたり伸び放題の左の草と

右のセンターラインに時折触れそうになりながら僕は

途中から少し酔った君を気に掛けながら山道を川沿いに

青い看板を頼りに湖を目指すカーブの度に僕は小さな困難を

越えて小さく踊るような気分になる君の体も小さく揺れる

左へ右へ大丈夫と僕が聴くと君は平気と小さな声でその度

言った

 

遊覧船の運転手とゆう仕事は随分自由な気がするなあと

仕事探し真最中の僕は本気ではなくて思う湖から絶え間なく

吹いて来る風が気持ち良くて手摺の後ろで優しい気持ちになる

夜から始まる紫陽花のライトアップを見に行くまでと

時間潰しのように思っていたのが思わず楽しくなるいつもなら

きっと入らないゲームセンターで久し振りに使うような筋肉で

僕も君も笑った

 

この花のように見えるのは紫陽花のガクの部分で上のこの

小さなのが花なんだよとまだ日が沈んでしまわないうちに僕は

君に言う何かを言いたいような何も言いたくないような

それでもはっきりとした声と気持ちで

 

君は何も言わなかったけれど本当に今度は平気だったのかなあ

帰り道はまた同じ山道を僕は少しスピードを上げて走った

 

蒸し暑い日が続いたかと思うと小雨が止んだ後の真夜中に急に

嘘みたいに涼しくなるいつものように窓を開けていると

眠れない程寒いくらいに

 

目が覚めていても部屋の天井にはぼやけた欠けた月もない

僕も淋しくてもいいからと窓を閉めることがある

君がでもいればこそだと眠りながら紫陽花の淡いそれでも花の

上の星空を思い出しながら僕は思った