港公園

夜がまた眠られない

街に灯かりが点る頃街を歩いている

 

黄金週間くらい僕も

早く起きて神戸の広い道を朝に作ったサンドイッチ持って

噴水の公園に辿り着く

君が恐がる鳩が来る前にシーチキンと君の切った胡瓜茹でた

たまごとレタス、さっき買って来たグレープフルーツ紅茶と

カフェ牛乳で流し込む

銀色のだだっ広いベンチチェアの上で

真っ白い水の柱とこんもりとある向こうの木々の緑、空の青

 

昨日も久し振りに朝起きて地下駅でまだ昼前に待ち合わせ

サンクンガーデンのガラス屋根からの陽光なんかが眩しくて

外に上がる階段を人がいなければ君は手を組んで

繋いでは放して商業複合ビルで服を見るランチを食べて雑貨を

窓、壁、照明、人を流し見てエスカレーターを昇り降りする

君の知っているお店を中心に巡り巡って僕も少し弾んで今日は

 

海を目指している

広い車道に掛かる長い信号を跨ぐ歩道橋スロープをのんびりと

登ってリズムを聴く港公園で何かしているのかなお祭みたいな

心が動く

 

女の子たちがサンバを踊る

突堤の先に腰掛けて海を見ながら時々振り返ると踊っている

靴下を脱いで海風に当たっている間も練習を抜けている女の子

俄かに出来たお友達と手摺の向こう側で衣装を揺らしている

大きな白い船が大きな白いホテルの船着場までスムーズに着く

白くない鳥が潜る

 

夜がまた眠られない

それから君の部屋から戻って来たのが日の暮れ掛けた頃で

しばらく電車の中でもうとうととしていたんだけれど眠たくて

夜まで眠ってしまう傘持ってっていいよって言っていたけれど

今もまだ予報の雨は降らないよ真夜中のもう二時も回って

 

飛ぶ鳥のいる空を見ている突堤の石段を立つと見つけた野原

男の子たちが紙飛行機を飛ばし合っている君の鞄の中の

三、四色の昨日買ったばかりの狭いシートを端の木陰に敷いて

二人で横になっている腕をくっつけて連休っぽいね

髪の毛がぐりぐりの男の子が白いものを手に近づいて来て言う

君の背中の影でものすごいカーブを見せたと

少し起き上がって腰掛けていた時

熱心に何度も言う日差しが眩しくてハンカチを顔に被せていた

君も僕も知らない内に起こった出来事、だからただ笑ったんだ

眠たくて眠たくてまたすぐ横になっている

 

街に灯かりが点る頃街を歩いている

今夜のおかずに悩んだ挙句ピロシキを中華街まで戻って買って

齧りながら駅までの狭い道人の多い夜の道

袋にシューマイぶら下げて電車に乗って家の近くのコンビニで

お酒を買って豆腐を買ってそれだけの夕食後、君は酔い潰れる

 

サンバの女の子たちはあれから街の通りを練り歩いた

夏の事を話すと君と僕が続いていたらと君は言う

僕の顔はあんなくらいで赤く日焼けして酔っ払いだと指差した

君はお化粧だけは落として酔い潰れて眠り込んでしまう

笑いながら生まれて来たような女の子だと言われている君は

夜にまた眠っているお酒は抜きにしても毎日がこんなと思って

 

階下のコンビニがシャッターを閉める音がする道を挟んである

駅の灯かり通過する電車の音も隣の部屋の男女の話声も

テレビを消すと寝顔を消すように灯かりも消して僕も横になる

 

帰る前の日の平日は時間を見計らって僕は鶏肉と野菜を数種類

生クリームに牛乳を買って来て鶏のクリーム煮を作っている

途中から帰って来た君とバターに小麦粉が球にならないように

フライパンで木ベラを手早く掻き回したら驚く程上手に出来て

前代未聞と大喜びして満腹ながらもデザートにモカロールまで

コーヒーで流し込む

 

朝に起きられない僕は寝ぼけ眼で君をドアから見送って

昼過ぎになってまた残りのクリームソースとトーストを

まどろんですぐまたコーヒーでモカロールを喉に通して

楽しかったまたねまたねとメモを残して君の部屋を出る

 

今はただ何も考えないように考えないようにいずれ眠たくなる

夕方の電車で帰って行く僕は揺られながらたぷんたぷんと